熊野川ではサツキマスのことを「ノボリ」と呼ぶ。
そのノボリを釣りに、10年以上、毎年熊野川を訪れていたのだが、熊野川で水害があった翌年から釣行が途絶えていた。
その熊野川へ、久しぶりに足を運んだ。
ノボリを釣りたい気持ちもあるが、最大の目的は、熊野川の懐の深い自然にとけこむこと。
深い山の緑。透明な流れ。そんなロケーションの中で、河原に大の字に寝転ぶことの心地よさは、海では決して味わえないものなのだ。
家から熊野川まで、500キロ以上の単独ドライブは過酷だが、魅力は確実にそれを上回る。
現地在住の大植さんと合流し、流れに向かう。
時折、一帯を霧雨が包んだが、それさえも心地よい。
この風景にとけこむことが重要なのだ。
コンデジを水中に入れてシャッターを押してみる。
この清流が、銀ピカのサツキマスを育むのである。
そして……、相性の良い熊野川は、今回も微笑んでくれた。
たまりませんねぇ。
夕方、大植さんの先輩、松本さんの船で、上流を案内していただいた。
冷厳幽谷と呼ぶにふさわしいロケーション。
岩肌にしがみつくようにツツジが咲いていた。