巷にライトタックル(ちなみに最近は「LT」と省略されて記載されているケースがほとんどですが)という言い方が浸透するようになって何年経つのだろうか……。
ルアーフィッシングはもちろん、船釣りでも、磯釣りでも、投げ釣りですらそんな言葉が使われるようになってきた。ところが、言葉だけが一人歩きしているケースのなんと多いことか。できることなら、中味のあるライトタックルゲームを育ててゆきたい。本質を見失わず、発展性や応用の利くライトタックルゲーム……。
昨日ぼくは、南伊豆大瀬の沖磯へ、釣り雑誌『磯・投げ情報』の連載取材でブダイ釣りに出かけた。連載タイトルは『波間の自由時間』。熟年釣り師にとっては懐かしく思い出されるような内容が毎回登場することになっている。
ちなみに今回のテーマは、全長90センチもある「島ウキ」を使ったノリブダイ釣り。おせわになった渡船屋さんは、菊水荘の菊一丸。実は、2日前にも出かけ、納得がいかなかったために、1日置いてまたまた出かけてしまったというわけである。
初回の敗因は、太仕掛け。太いハリスと大バリの組み合わせ、そしてデカイ島ウキは明らかに食い込みが悪い。もちろん、今でも式根島あたりではバリバリの現役で活躍している仕掛けなのであるが、伊豆半島のブダイは若干スレ気味のようである。
てなわけでリベンジ釣行では、PEラインを巻いたスピニングタックルも持参。60センチのウキで爆釣となったわけである。ここで、フニャフニャのPEラインに遊動式のウキをセットすれば、トラブルが発生しやすくなるのは当然のこと。そこで、ウキの遊動部分だけをナイロンモノフィラメントにするという作戦を考え実行に移したところ、これが大正解。トラブルはないわ、よく飛ぶわ、アワセは利くわとよいことづくめ。PEラインとナイロンモノフィラメントラインとの接続にはコブのない最強ノット、「ミッドノット」を採用した。PEラインは1・5号。先につないだナイロンモノフィラメントは6号。
何を小難しいことを……、というなかれ。 ライトタックルゲームを実践していれば避けては通れない結び。その結びを知らずしてライトタックルを語るのは、間違っている、ということなのである。
こんなケースも。ライトタックルゲームの先駆となったのは、シーバスやタチウオのルアーフィッシングで始まった「ベイジギング」。逆にいえば、「ベイジギング」はライトタックルそのもの。使用ラインが細けりゃあロッドだって見るからにひ弱。それでよい。いや、そうでなければ面白くないのである。当然、リーダーも必要最小限の太さ(正確には強さ)を使う。魚の歯が鋭く、細いリーダーで不安な場合は、先端部分だけに太いリーダーを足してやればよい。
ライトタックルゲームでは、何より、ラインと、ロッドと、リールのドラグテンションのバランスが大事なのである。失敗しやすいのは、ただ単に軟らかなロッドで挑むのがライトタックルであると勘違いしてしまうケース。メインラインが太く(強く)なるとついついリーダーも太くなる。太くなるだけならまだしも、太くて長くなるとこれは相当危険。どう危険なのかといえば、ランディングの際、リーダーをリールに巻き込んで取り込みを行うことになるのだが、太くて強いリーダーをリールに巻き込んだまま、魚がギュギュッと走ればロッドがポキリと折れてしまう。せいぜい12ポンドテストや16ポンドテストの強度しかないロッドで、30ポンドも40ポンドも強さのあるリーダーで魚の最後の抵抗を押さえ込もうとすれば、ロッドが折れてしまうのは当然のこと。
それもまた、ライトタックルゲームの本質を理解していないことが原因なのである。
「ライトタックルゲーム」とは、強度の弱い、細いラインを使用することが基本であることをもう一度確認しておきたいのである。