久しぶりに「蔵出しエッセイ」。
<靴磨きにハマった>
長年履きこんだ革靴(主にデッキシューズ)のメインテナンスにハマっている。
くたびれてヨレヨレになった愛用の靴が、見違えるほどきれいになるからだ。
キッカケは、そろそろ捨てようかと下駄箱の隅に押しやっていたティンバーランドのデッキシューズを、捨てる前に感謝の意を込め、きれいにしてやろうとワックス掛けしたことだった。
革靴用のワックスをウエスで塗り込み、豚毛ブラシでこすってゆくと、みるみるうちに汚れが取れ、ついには艶が出はじめた。
ひょっとして、くたびれ果てていたわけではなく、ただ単にメインテナンス不足で汚れていただけなのか、と疑ってしまうほどの変わりようだ。
こうなると、ブラッシングにも気合が入る。
何たって、捨てようとしていたお気に入りのデッキシューズが、生まれ変わろうとしているのだ。
こうなったら徹底的にやってみるか、と、靴ひもを外して新しいものに替え、はがれかけていたソールを接着剤で接着し直す。
天気の良い日に陰干しすること丸1日。
もう一度ブラシでこすると、さらに艶が出てピカピカになった。
当然、行き先はゴミ箱ではなく、元の下駄箱。しかも、前より一層、愛着が強くなった。
そして、全く同じもう1足のデッキシューズの手入れに取り掛かる。
ワックスを塗り込み、丹念にブラッシング。
予想通り、ピカピカの新品同様(それは大げさだが、愛着の度合いは間違いなく増す)に変身した。
こうなると、手当たり次第磨きたくなるのがこだわり人間たる所以。
厳冬期用のノースフェースも、夏用のトップサイダーも、革靴という革靴を全て引っ張り出しては順番に磨いてゆく。
その生まれ変わった靴を眺めていると、えもいわれぬ満足感に浸れるのだ。
くたびれた革靴をお持ちの方は、ぜひ一度試してみていただきたい。
必要な物は、靴用クリームまたは防水ワックスと、豚毛ブラシのみ。
間違いなくハマります。
(初出:2010年6月)