前半の3日間を陸っぱりゲームで過ごし、首尾よく20キログラムオーバーのナイルパーチをキャッチすることに成功。目標の30キロには届かないものの、とりあえずショアゲームの釣果としては納得できるサイズである。
ところが、3日間の陸っぱりゲームでぼくと撮影スタッフの体力は著しく消耗し、疲労はピークに達していた。
砂漠気候で乾燥しているとはいえ、日中の気温は摂氏40度を軽く上回り、動くたびに汗が滴り落ちる。水分を補給しながら釣りを、撮影を続けていたのだが、炎天下の日差しは容赦なくぼくたちに襲いかかり、確実に体力を奪い去ってゆく。
そこで、予定通り4日目をトローリングに当て、船上でのんびり過ごしながら大物を狙うことにしたのだった。
一応、早朝の好時合をショアから釣り、10キログラム前後のナイルパーチを数尾キャッチ。
前日までの釣りで、すでに、シンキングミノーやディープダイバーでボトム近くをじっくり狙うというパターンは分かっていたため、ショアからの攻略に迷いはなかった。
2時間ほどキャストを繰り返し、そこそこ釣り、アタリが遠のいたところで今度はボート上から同じポイントをたたいてみた。
ボート上とはいってもミヨシ部分を岸に乗り上げた状態のボート上からキャストを行うため、陸っぱりのそれとたいした違いはないように思えたのだが、なぜか立て続けにアタリがある。
足もとが深い分、最後までしっかり、スローリトリーブが行えるのが原因だろう。
釣果は、10~15キロクラス。
ここでは、ライトタックルで釣果をあげることができたことと、一度試してみようと企んでいた、ジグヘッド&ソフトルアーの釣りが予想以上に効果的であることを確認できたことが大きな収穫だった。
さて、いよいよトローリングを開始することになった。
前回、4月のロケハン釣行の際にも2時間ほどトローリングを行い、20キロクラスを立て続けにキャッチした経験があったため、やれば確実に釣れるだろうという予想はしていた。
さらに、当地での最もポピュラーなフィッシングスタイルがトローリングであるため、その紹介もしておかなければならないだろうと考え、敢えて、休養を兼ねたトローリング中も撮影は続けてもらうことにした。
ガイドのモハメッドによれば、トローリングのポイントは、陸っぱりで攻め、さらに止めたままのボート上からも攻め続けた馬の背周りだという。
「ええーっ、いくらなんでもあれだけ攻めたんだからムリじゃないの~。いくらトローリングの威力が絶大だからって、そりゃあ釣れないでしょう」
半信半疑のまま、トローリングを開始する。
トローリングとなれば主導権はどうしたって、操船を担当するガイドのもの。ガイドのおもうままにポイントを選び、ぼくたちはただ、ロッドを構えて待ち続けるしかないのである。
いったんボートを沖に出し、岸からわずか10メートルほどのところをかすめるように引いてゆく。岸の角のあたりから沖にかけて、馬の背状に広がった水深10メートルほどの浅場がポイントだ。
一度、何事もなく通過した後、再びUターンして同じ場所へ戻る。朝から何度も何度も攻め続けているものの、ガイドのモハメッドは、まだそこに、でっかいナイルパーチが潜んでいると確信しているようなのだ。
2度目にそのポイント上をボートが通過し、そろそろルアーがポイントにさしかかっただろうかと話していたときだった。
同行のコーディネーターのロッドにアタリがきた。
「ヒット!」
力いっぱい合わせ、ファイトを開始。その引き具合、ロッドのしなり具合に重みが見て取れる。
「大きいでしょ」
「結構大きそうですね」
ぼくの問いに、ロッドを手にしたコーディネーターがそう答える。
それでも、ボート上からのファイトというゆとりもあったのだろう、緊迫感はさほどでもなかった。
何度かラインを引き出されつつも、確実に距離が詰まり、20~30メートルほどに近づいたとき、魚が急に浮上を始めた。
ラインの動きからその位置を判断しつつ、皆でその瞬間を見守る。
やがて、魚が水面を割って飛び出し、エラアライを行った。
「でかい!」
「なんだあれは」
口々に感嘆の言葉を吐き出す。
大きな口を開け、激しく首を振りながら半身を空中に乗り出したのは、紛れもなくナイルパーチ。しかも、想像をはるかに上回るほどの大きさである。
慎重にファイトを続け、船べりに寄ったところでモハメッドがエラにロープを通し、そのまま浅瀬に引き上げランディング。
計測すると、全長170センチ、体重60キロの超大物であった。
水中で回復を待ち、無事リリース。
興奮冷めやらぬまま、再びトローリングを続行する。ポイントは相変わらず同じ。
その1引きめに今度はぼくのロッドにアタリがきた。
「どうですか?」
と聞かれ、
「これも結構デカそうだよ」
と答える。
デカそうにはデカそうだったのだが、何せ、ついさっき60キロがあがったばかり。どれほどの大きさをさしてデカイというのか、判断がつかなくなってしまっていた。
しばし慎重にファイトをおこなう。
距離が迫ったところで、魚が跳ねた。
「でかい」
20キロクラスではない。
船べりに寄せ、慎重に取り込む。
先ほどの超大物ほどではないが、体重42キロ。大物と呼べるナイルパーチである。
さらに次の攻略で、15キロほどのナイルパーチがヒット。
トローリングの威力をまざまざと見せつけられた1日となった。
さらに、別のポイントのトローリングでは、10キログラム台のナイルパーチに加え、念願1つであったでっかいナマズがヒット。
こりゃあデカイんじゃないの、と期待しつつファイトするほどの、力強い引きをみせてくれたのであった。
それにしてもナセル湖の魅力は計り知れない。
トローリングでイージーに100キロクラスに挑むのもよし、気合を入れてショアからの大物釣りに挑むのもよし、可能性は無限大といってよい。
さらに、サファリ形式のキャンプ釣行も、快適そのもの。
ナセル湖は、ビッグゲームを心地よく堪能できる、アングラーの楽園なのである。
(『ザ・フィッシング』エジプト釣行トローリング編は、11月1日、土曜夜5時半よりテレビ大阪・テレビ東京系にて放映予定。こうご期待)